歯医者での根管治療中に聞こえる「ピーピー」という電子音の正体をご存知ですか?本記事では、音が鳴る仕組みや、痛いと感じる原因、治療中の不安を解消するための対処法を解説します。
歯医者さんでの治療中、突然聞こえてくる「ピーピー」という電子音。 特に、歯の神経を処置する「根管(こんかん)治療」の最中は、この音がよく響きます。
「もしかして失敗してる?」
「削りすぎているの?」
見えない口の中を治療されているからこそ、ちょっとした音にもドキドキしてしまいますよね。
結論からお伝えすると、その音は全く心配いりません。この記事では、根管治療中の電子音の正体や鳴る仕組みを解説します。痛みを感じたときの対処法や、よくある疑問にもお答えしますので、ぜひ参考にしてください。
根管治療中に鳴る「ピーピー音」の正体

治療中に聞こえてくる音の正体は、「電気的根管長測定器(EMR:Electric Measuring of Root canal length)」 という医療機器の音です。 電気的根管長測定器は歯の根っこの長さを測るメーター のようなもの。
そもそも根管治療とは、むし歯や外傷などによって歯の内部(歯髄)に細菌が入り込んだとき、汚染された神経や組織を取り除き、根管の中を清掃・消毒したうえで薬剤を詰める治療です。
歯の根の管(根管)は、髪の毛ほどの細さしかありません。 おまけに曲がりくねっており、歯科医師であっても肉眼やレントゲンだけで「正確な深さ」を把握するのは至難の業です。
そこで活躍するのが電気的根管長測定器(EMR)です。根の先端(出口)に到達した瞬間に「ピーピー!」と音を鳴らして教えてくれます。
なお、EMRは日本で発明・発展した技術です。現在では世界中の歯科医院で広く使われており、90%以上の正確性があるとされています。
仕組みを解説!電子音が鳴る理由

では、なぜ機械は「見えない歯の根の長さ」を正確に知ることができるのでしょうか。 その仕組みは、人間が持つ 「電気を通す力」 を応用したものです。
治療中、唇の端に小さな金属フックを引っ掛けられた経験はありませんか? あれは、機械から流れるごく微弱な電流の通り道をつくるためのものです。
器具を根管の奥へ少しずつ進めていくと、ある地点で急に電気の通りやすさが変わります。そのポイントこそが、歯の根っこの先端(出口)です。
歯自体は電気をほとんど通しません。しかし根の先には、歯根膜(しこんまく)という組織が存在します。歯根膜には血管や神経が密集し、水分も豊富に含まれているため、電気を非常に通しやすいのが特徴です。
器具の先端がこの歯根膜に到達した瞬間、電気抵抗が大きく変化します。機械はその変化を瞬時にキャッチし、電子音で知らせてくれます。
なぜそこまでして正確な長さにこだわるの?

もし、根の先まで到達せずに途中で治療を終えてしまったらどうなるでしょうか。取り残した神経の死骸や細菌が後から繁殖し、数ヶ月、あるいは数年後に再び激しい痛みや歯ぐきの腫れ(根尖性歯周炎)を引き起こすリスクが高まります。再発すると治療の難易度は跳ね上がり、最悪の場合は抜歯になることもあります。
逆に、測定器なしに感覚だけで進め、根の先を突き破って削りすぎてしまうと、歯を支える骨や歯根膜といった組織を深く傷つけてしまいます。これにより、治療後の痛みが長引いたり、傷口から細菌感染を起こして治癒が遅れたりする原因になってしまうのです。
さらに、根の先を突き破った部分から充填材(じゅうてんざい)が周囲の組織にはみ出すこともあり、異物反応による慢性的な炎症につながるケースもあります。
音が鳴るときに「痛い」と感じる3つの原因
安全だと言われても、痛みがあると不安になりますよね。 音が鳴るタイミングで痛みを感じるのには、3つの理由があります。
原因①:器具の先端が敏感な組織に触れた
歯の根の先には、繊細な神経があります。 測定器は、器具が「根の先端」に触れたことを感知するため、器具が組織に一瞬触れて刺激になることがあります。
歯根膜には痛みを感じる神経が分布しているため、麻酔の効きが弱い場合や、神経の一部がまだ生きている場合には「チクッ」とした鋭い痛みが走ることがあります。ただし、この刺激は瞬間的なもので、器具を少し引き戻すだけでおさまることがほとんどです。
原因②:根の先に強い炎症が残っている
むし歯が重症化し、歯の根の先に「膿(うみ)の袋」ができている場合、周囲はデリケートになっています。 炎症がある組織は通常より敏感で、少しの圧力変化にも反応してしまいます。
そこへ器具が近づくだけで周囲の圧力が変化し、ズキンとした痛みとして伝わってしまうのです。
原因③:麻酔の効きが不十分である
根管治療の2回目以降など、すでに神経を取った歯の治療では麻酔なしで行うことも珍しくありません。しかし、神経の一部が生きていたり、炎症が激しかったりすると、通常量の麻酔では十分に効かないことがあります。
特に下の奥歯は骨が厚く、麻酔が浸透しにくい部位です。強い炎症がある場合は、炎症部位が酸性に傾くことで麻酔薬の効果が弱まるというメカニズムも関係しています。
痛みを感じたときの対処法

もしも治療中に「ピーピー」という音と共に痛みを感じたら、我慢する必要はありません。
痛いときは左手を挙げる
歯医者さんでの大原則ですが、痛みを感じたら遠慮なく左手を挙げて歯科医師に伝えましょう。
麻酔を追加したり、治療のペースを調整したりとベストな対応ができます。我慢し続けてしまうと、体に力が入って余計に痛みを感じやすくなったり、急に動いてしまって器具が折れるリスクもあります。
事前に不安を伝えておく
もし過去に痛い思いをしていれば、治療が始まる前に 伝えておきましょう。あらかじめ麻酔を効かせるなど、慎重に進めてくれます。
呼吸法でリラックスする
治療中の緊張は痛みの感じ方を強めてしまうことがあります。ゆっくりと鼻から吸って、口から長く吐く深呼吸を意識すると、体の緊張がほぐれて痛みを感じにくくなる場合があります。
「ピーピー音」以外にも気になる根管治療中の音

見えないお口の中の治療では、少しの物音でも過敏になってしまうものです。根管治療中によく聞こえるその他の音の正体も知っておきましょう。
「カリカリ」「ゴリゴリ」という音
「ファイル」と呼ばれる細いヤスリのような器具で、感染した神経や汚れをこすり落としている音です。根管の壁を綺麗に掃除し、最終的な薬が隙間なく入りやすいように形を整える、根管治療におけるメインの作業音です。
回転式のファイルを使用する場合は「ウィーン」というモーター音が聞こえることもあります。
「ピピッ」「ピピッ」という短い電子音
一定の間隔で短く鳴る場合は、根管内を洗浄・殺菌するための「超音波洗浄機」の作動音であったり、削った部分を埋める材料を光で固める際の照射器の音である場合が多いです。
「ズズズ…」という吸引音
唾液や削りかす、洗浄液などを吸い取るバキュームの音です。根管治療では、唾液に含まれる細菌が歯の根の中に入り込むことを絶対に防がなければなりません。常に清潔で乾燥した状態を保つため、頻繁に稼働させています
「ギュッ」「ムニュッ」という圧迫感のある音
根管の掃除が終わった後、最終的な薬剤(ガッタパーチャポイントなど)を根管に詰め込む際に感じる音・感覚です。根の先までしっかりと薬を密着させるために、ある程度の圧をかけて充填します。音というよりも「押される感覚」に近いかもしれません。
まとめ
根管治療中に鳴る「ピーピー」という音の正体は、歯の根の長さを正確に測る電気的根管長測定器です。決して削りすぎや失敗を知らせる警告音ではなく、精密な治療を行うためにゴールを知らせてくれる音ですので安心してください。
根管治療は、大切な歯を残すための「基礎工事」とも言える重要な治療です。不安だからといって途中で中断してしまうのは危険なため、最後まで治療を完了させることが大切です。
厚誠会歯科 新百合ヶ丘では、痛みに配慮した治療と不安を取り除くコミュニケーションを大切にしています。不安を抱えている方は、どうぞ我慢せず当院へご相談ください。













