「根管治療をしたのにまた痛みが出た」という経験がある方、実はめずらしいことではありません。せっかく治療を終えたはずの歯がまたズキズキしたり、噛むと違和感が出たりすると、「今度は大丈夫かな」と不安になってしまいますよね。今日は、その不安の背景にある「根管の見えにくさ」と、マイクロスコープ(歯科用顕微鏡)がその見えにくさにどう向き合うのかを、一緒に整理していきましょう。
根管治療がなぜ難しいのか(根管の複雑な形態)

教科書の図とは違う、現実の根管のかたち
根管治療というと「歯の神経を取る治療」というイメージを持たれる方が多いのですが、実際の根管は一本のまっすぐな管ではありません。歯根の中ほどや先端付近には、主根管から枝分かれした「側枝」と呼ばれる細い管が存在します。学術報告でも側枝は主根管と同じく歯髄組織を含んでおり、歯髄が細菌感染・壊死した際には歯根側面に病変を形成する経路となると説明されており[3]、この側枝の中に感染した組織が残ってしまうと、それが再発の火種になり得ます。
初回治療でも簡単には終わらない理由
歯内療法に関する学会誌でも解剖学的な根管系の複雑さから、根管内を完全に無菌化することは困難であるため、初回治療および再治療の成功率はおのおの90%および70%以下に留まっていると報告されています[2]。つまり、根管治療は「一度きちんと終わらせれば絶対安心」という単純なものではなく、複雑な形態そのものが治療の難易度を上げているのです。何度も治療を繰り返しているという方は、根管治療を繰り返すのはなぜ?終わらない原因と再発を防ぐ3つのポイントもあわせてご覧いただくと、ご自身の状況を整理しやすくなるかと思います。
肉眼での限界を知っておく
肉眼での視野には限界があり、根管の入口を見つけることはできても、その先の枝分かれや細い溝までを正確に追いかけるのは容易ではありません。だからこそ、根管治療では「見る力」そのものを補う工夫が求められるのです。
マイクロスコープで見える根管内部の世界

拡大視野がもたらす変化
歯科用マイクロスコープは、治療部位を数倍から数十倍に拡大しながら明るく照らし出す機器です。学術論文でも従来、見えない手探りの処置であった根管処置に際して、近年マイクロスコープが使用され始め、歯内治療において治療の可視化と精密化が可能となり様々な困難な症例に対して積極的に取り組めるようになったと述べられています[1]。肉眼では判別しづらかった根管の入口や、細く枝分かれした部分の輪郭まで、拡大された視野の中で確認しやすくなります。
見つけやすくなるもの・扱いやすくなるもの
具体的には、次のような場面で可視化の効果が報告されています。
| マイクロスコープが役立つ場面 | 期待される変化 |
|---|---|
| 根管の探索 | 見落としやすい追加根管の発見 |
| 根管内異物の発見・除去 | 破折した器具などの位置特定 |
| 歯根破折の発見 | ひび割れの早期把握 |
| 穿孔部の発見と封鎖 | 誤って開いた穴の正確な処置 |
論文でも根管の探索, 根管内異物の発見・除去, 歯根破折の発見, 穿孔部の発見と封鎖, 外科的歯内療法などが可視化によってより正確に行われ過剰切削や穿孔等の偶発症をなくし低侵襲な手術によって術後の痛みや腫れが減少したと報告されています[1]。当院でも、顕微鏡下治療によって小さな異変も見逃さない体制を整え、医療法人内でも特に精密な治療に力を入れています。
記録として残せる「見える化」の価値
拡大した映像を記録できることも見落とし防止につながります。拡大された治療画像を記録することによって、患者に対して現在の患歯根管の正確な状態を示しながら説明することができ、信頼関係の構築にも役立っているとされており、治療中の状態をご自身の目で確認しながら説明を受けられることは、納得して治療を受けるうえでも大切なポイントです。清潔な視野を保ちながら治療を進めるうえでは、歯科治療で用いられるラバーダム防湿とは?メリット・デメリットを解説で紹介しているような防湿の工夫も組み合わせて行われます。マイクロスコープを使った歯科治療全般についてはマイクロスコープの歯医者は何が違う?メリット・デメリットと費用の目安について解説でも触れています。
見落としが再発治療につながるリスクとは

「見えない根管」が病巣として残ってしまう
根管の中に感染した組織や細菌がわずかでも取り残されると、そこが病巣となって再び炎症を起こすことがあります。とくに枝分かれした側枝は、器具だけで機械的にきれいにするのが難しい部位です。だからこそ、洗浄や薬剤による処置とあわせて、見える範囲を広げておくことが重要になります。治療の途中で膿が出るなどの症状が気になる方は、根管治療中に膿が出る原因は?様子を見て良いケースとすぐ受診すべきケースを解説も参考にしてみてください。
再治療は初回よりも難易度が上がる
一度治療した歯を再び開けて処置する再根管治療は、すでに人工的な材料が入っている分、初回治療よりも複雑になりがちです。前述の通り初回治療および再治療の成功率はおのおの90%および70%以下に留まっているという報告からも、再治療になる前に、初回の段階でできる限り見落としを減らしておくことの意味がうかがえます。治療中に器具の音が気になった経験がある方は、根管治療でピーピー鳴る音の正体は?も参考になります。
保険診療と精密根管治療の違いを知っておく
根管治療には保険診療と自費診療(精密根管治療)があり、使用できる材料や設備、かけられる時間に違いがあります。どちらを選ぶかで治療の進め方も変わってくるため、費用面が気になる方は根管治療は保険と自費どっちがいい?費用やメリット・デメリットを比較を先に確認しておくと、ご自身に合った選択肢を検討しやすくなります。また、治療中に綿栓が外れてしまったなどのトラブルに直面した場合は根管治療中に綿栓が取れた!すぐできる応急処置とやってはいけないNG行動を解説もあわせてご覧ください。
まとめ
- 根管は一本の管ではなく、側枝と呼ばれる細い枝分かれがあり、この複雑な形態が根管治療の難しさの根本にあります
- 歯内療法学会誌の報告でも初回治療および再治療の成功率はおのおの90%および70%以下に留まっているとされ、見落としをゼロに近づける工夫が重要です
- マイクロスコープは根管の探索や異物の発見、穿孔部の把握など可視化によってより正確に行われる場面が学術的にも報告されています
- 拡大した映像を記録することで、治療の状態をご自身の目で確認しながら説明を受けられる点も安心材料になります
- 当院では顕微鏡下治療を軸に、医療法人内でも精密な根管治療に力を入れて取り組んでいます
根管治療を繰り返している、再発が不安という方は精密歯科治療のページもあわせてご覧ください。厚誠会歯科新百合ヶ丘は小田急線 新百合ヶ丘駅から徒歩2分、エルミロード6Fにあり、土曜日も診療しています。ご自身の歯の状態について詳しく相談したい方は、初めての方へ(初診の流れ)からお気軽にお問い合わせください。歯科医師が一人ひとりの状態に合わせて治療方針をご説明いたします。
参考文献
[1] J-STAGE「マイクロスコープを使用した根管治療」jstage.jst.go.jp
[2] J-STAGE(日本歯内療法学会雑誌)「41巻1号」jstage.jst.go.jp
[3] J-STAGE(日本歯科保存学雑誌)「根管治療における側枝の概要とその問題点・対応」jstage.jst.go.jp













